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怪文書しか書けないオタクが好きなものをめいっぱい布教するサバト

殺彼のCV予想

 前回ブログ本文が長すぎて書くのを断念した殺彼もしドラマCDやアニメになったら声優さんは誰になるだろな~といったゆるい話です。なお妄想じゃなくて予想なのはメディアミックスいずれ来るって確信を持ってるからです。元声豚上がりとしては切実に『殺彼』を耳からキメたい。頼む。ということでつらつらと声優さんの名前をあげつつ演じたらこうなるんじゃないかな的所感を書きます。以下敬称略。

 

前回の殺彼布教ブログはこちら。

hukyou.hatenablog.jp

 

殺彼CV予想

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桐生優太

松岡禎丞>SAO キリト役、落第騎士の英雄譚 桐原静矢役、モブサイコ100 花沢輝気役

 優太役の松岡君が!ど~しても!聞きたいです!!

 ラノベハーレムやれやれ系主人公をこなせる所と、落第騎士をはじめとした下衆演技が振り切っていて気持ちいいのにナチュラルな日常のお芝居も上手な所が推せます。リョナられ声や懇願する声がいい。

 優太がどんどんと殺人鬼たちの世界に踏み込んでいくにあたり、心情の変化等も松岡君なら上手く演じてくれるのでは…なによりお芝居に説得力があって引き込まれるとこがいいです。個人的にアニメ版優太って感じ(?)

 声的には「よるとあさの歌」(BLCD)の朝一役(攻め)がチンピラクズ系でありつつどこか憎めない愛嬌もあり、ノンケくさい暴言吐いたり罵倒したり、逆に殴られたり心身ともにボロボロにされるリョナられボイスが優太を演じる想像つきやすいかなと思います。

 伊藤健太郎NARUTO 秋道チョウジ役、BLEACH 阿散井恋次役、金カム 白石由竹役

  イトケンの優太は体幹がしっかりしてそう。殴られたら確実に死ぬ…。あと殺人鬼たちの中でも絶対強い。男くさくて骨太な感じの優太に仕上がりそうでぐっときます。靴や時計を贈りたくなっちゃう優太。貢ぎたい。

 細谷佳正進撃の巨人 ライナー役、黒バス 日向順平役、斉木楠雄 窪谷須亜蓮役

 ほそやんの優太は彼女と居る時の軽薄な声と暴力を振るう酷薄な声を出すシーンがギャップがあって凄く良さそう。けど声帯がほそやんの優太とか女が放っておかなさそうでややムカつく…。女殴るシーンにたっぷり尺使ってほしいタイプの優太です。

 興津和幸ジョジョ ジョナサン役、監獄学園 アンドレ役、スタミュ 戌峰誠士郎役

 興津さんがヤンキー演じる時に出すがなりが好きなので入れました。どこかへたれっぽさもあるので他殺人鬼に押されてびびってる時の演技も良さそう。公式のプロフィールにある普通の男の優太のイメージに個人的に一番近いです。

 杉田智和銀魂 坂田銀時役、ハルヒ キョン役、男子高校生の日常 ヒデノリ役

 さつかれちゃんの優太などスピンオフの時の脳内イメージ。苦労性ツッコミの杉田ボイスを優太で聞いてみたい感…。声の張りがパーンとしてて気持ちイイ優太。九条先生も合うと思ったんですけど久々に主人公杉田を聞きたいので優太のほうで。

 

竜崎豪

黒田崇矢SHOW BY ROCK!! ダガー役、デュラララ!! サイモン役

 CV的に戦闘力が凄い豪さん。夜中絶対遭遇したくない。物凄い手際で肉を捌いていそうな豪さん。鹿肉の解体方法とか淡々と喋ってほしさある。常連のおっちゃんとの会話がこなれていそうで硬派ながら男の色気がありそうな豪さんを演じてくれそう。

 武内駿輔>デレマス P役、キンプリ アレク役、ダンガンロンパV3 獄原ゴン太役

 低いといっても武内君の声の低さは若い低さなので40の豪さんにはまだ早いと思うんですけど、どうしても聞いてみたいので…。粛々と肉を調理してくれそう。武内君の演じる豪さんの殺生理論、進研ゼミみたくわかりやすそうで頷いちゃいそう。店での穏やかな姿が聞きたいCV。

 安元洋貴鬼灯の冷徹 鬼灯役、ヘタリア ドイツ役、弱虫ペダル 金城真護役

 人間を料理する男の声を、料理が得意な中の人が演じるっていうフィクションと現実の曖昧感がいいです。殺彼BDボックスの映像特典に安元さんが出演声優さんたちにジビエ料理を振る舞いながら喋るビデオが付く。(確信)

 中村悠一>俺妹 高坂京介役、ハイキュー 黒尾鉄朗役、ガンダム00 グラハム役

 同じくさつかれちゃんイメージ。中村さんが演じると可愛すぎて本当に人間食べ食べハ○ーキティおじさんになっちゃう…。杉田さんと同時起用したらアドリブが楽しいことになりそう。

 

松本記知

鈴木達央ドリフターズ 菅野直役、黒子のバスケ 高尾和成役、七つの大罪 バン役

 原作がたっつんの声。ってくらい想像がつく。某ゲームみたくヤンチャで獰猛ながら愛嬌とカリスマがある人を惹きつけてやまないぢるちをたっつんの声で聞きたいし、ぢるちがたっつんってだけでCD買う強力な理由になりすぎる。

吉野裕行スケットダンス ボッスン役、ネウロ 吾代忍役、ハンター ゲンスルー

  チンピラ寄りのぢるちになりそう。かなり粗暴そうで遊びのシーンがえらいことになりそうでそういう意味でもドキドキするキャスティング。ナイフめっちゃノイズ立てながらペロペロしてほしい。

 櫻井孝宏ダイヤのA 御幸一也役、怪 薬売り役、コードギアス 枢木スザク役

 ぢるちにはどーみてもやばそうなのに女がついフラフラと引き寄せられてしまうようなフェロモンが欲しいので櫻井さん。WaltzのドラマCDの蝉(殺人鬼役)の演技の櫻井さんが無邪気でとてもかわいかったのでぢるちも聞いてみたい。

 

和巳景楽

間島淳司刀剣乱舞 にっかり青江役、緋弾のアリア 遠山キンジ役

 けらちゃんの声は格好がいい声でありながら掴みどころのなく、平坦だけど偏執っぽさが欲しい、難しすぎるバランスに応えられそうなのはまじ兄かなと。あの超小文字長文台詞を読み上げるだけの作業用BGMが欲しいタイプのけらちゃん。

 島﨑信長>Free! 七瀬遙役、斉木楠雄 海藤瞬役、FGO First Order 藤丸立香役

 クールで感情の起伏が少なさそうなけらちゃん。綾波系ヒロインけらちゃんになりそう。あと若い夢女子に物凄く人気でそう。けらちゃん自身がお人形さんっぽい演技の仕上がりになりそう。

 鈴村健一銀魂 沖田総悟役、戦勇。フォイフォイ役、黒子のバスケ 紫原敦役

 湿り気度合の高いけらちゃん。長文台詞を憑りつかれたように喋ってくれそう。櫻井&鈴村ペアならぢるけらのキャスティングが逆でもハマりそうなところが推せます。あと声優オタクの性癖に優しいペア。

 石田彰エヴァンゲリオン 渚カヲル役、サイコパス 縢 秀星役、最遊記 猪八戒

 超越者系けらちゃん。聞こえてはいけないものが聞こえていそう。石田彰声のけらちゃんとか信者がついて新しい宗教が生まれかねない危険さなので駄目だと思います。でも聞きたい。

 

九条薫

荻野晴朗べるぜバブ 姫川竜也役、進撃の巨人 デニス役、他吹き替え作品

  べるぜバブの姫川の声があまりにも九条先生のイメージに近くて…!九条先生って男の人の中では声が高めでプライドも高そうで神経質そうでイライラしてて、感情が高ぶると声が掠れそうなイメージなんですけどまさにって感じです。周りに振り回されてギャーッってなってる先生の声が聴きたい声質。

 一条和矢DD北斗の拳 ラオウ役、すごいよマサルさん マチャ彦役

 イケメンダンディボイスなんだけど神経質さも伺えるところが九条先生みを感じたので。低めの九条先生なら一条さんを推します。少し父性もありそうなところが新たなギャップになるのではと思います。

 置鮎龍太郎ぬ~べ~ 鵺野鳴介役、テニプリ 手塚国光役、Fate/Zero バーサーカー

 ロイヤルみとサドっぽさがある系九条先生。ギャグシーンのコミカルな先生もオッキーならノリノリで演じてくれそう。置鮎ボイスにせせら笑われながらあのニヒルな台詞を言う姿を思うだけでテンション爆上がりしませんか?

 

望月浩太郎

小野大輔ジョジョ 空条承太郎役、デュラララ!! 平和島静雄役、ばらかもん 半田役

  完璧イケメンなのにどこか気持ち悪さと残念さを漂うような望月を演じてくれそう。九条先生の尻に敷かれててもめげずに喜んでいそうなタイプの望月。飼い主に懐く大きくて毛並みのいいラブラドールレトリバーのような望月になるイメージ。

森川智之金田一少年 明智健悟役、スラムダンク 水戸洋平役、犬夜叉 奈落役

 男の尻に敷かれる帝王っていうのも面白いのではと思ったので。殺す女の手を物凄く念入りにケアしてそう。吸血鬼っぽいというか年齢不詳の正統派美男って感じの望月になりそうだなぁと思いました。

立花慎之助>ときメモ3rd 設楽聖司、文豪とアルケミスト 島﨑藤村役

 ナルシスト感が三割増しの望月。ザ・乙女向け特化の望月浩太郎という感じ。九条先生との折り合いが悪くなりそうなくらいメンタルが強そう。ツンケンしたサドっぽい高めの声の望月なら立花さんがしっくりくるのでは。

諏訪部順一テニプリ 跡部様、黒バス 青峰大輝、学園黙示録HOTD 小室孝役

 バラの香りが自然と漂い背景に花が咲き乱れる望月浩太郎だ…。フェチズムっぽさが増すのではと思います。諏訪部声の望月とか色気の暴力が過ぎて近くににいるのに耐えられなくて九条先生が部屋から叩きだしそうだけど。

 

寿桔平

梶裕貴進撃の巨人 エレン役、マギ アリババ役、ワールドトリガー 三雲修役

 迫力ある呻き声を聞けそうだなと思うので。ショタの可愛さはどこか残しつつ圧の出せる人は梶君かなと。鉄平役と桔平役の声優さんが入れ替わってもそれほど違和感のないキャスティングっていいんじゃないかなって理由で梶君です。

高戸靖広>セーラームーン アルテミス役、ヘタリア ロシア役

 無邪気さと残酷さが両立した、マスコットみのある可愛いお声の高戸さんを推したいです。笑い声が可愛い声優さんなので呻き声もきっとかわいい。怒った声もかわいい。かわいいがいっぱいな桔平君の演技を聞いてみたい。 

 

寿鉄平

宮田幸季バカテス ムッツリーニ役、封神演義 ナタク役、弱虫ペダル 杉元照文役

 殺彼住民の皆様におかれましては、一度は宮田幸季のショタを通ってきたことがあるのではないでしょうか。宮田幸季のショタで性癖を形作られた身としては是非とも鉄平君の声は宮田さんで聞きたいです。

市来光弘刀剣乱舞 大和守安定役、ブレイブルー ヒビキ=コハク役

 かわいさとエグさのバランス、信愛と酷薄さのギャップなら市来さんがいいのではと。市来さんの声でニコニコ~と鉄平ちゃんが笑いかけながら喋ってくれたら例えどんなヤバいことを話してようと笑顔になれそう。 

 

西園寺徹

江口拓也ポケモンオリジン グリーン役、グランブルーファンタジー ヴェイン役

 元気いっぱい!ちょっとアホそうだけど肝心なところは聡い!溢れ出る常人ではないオーラ!中の人の性格的にぴったりだと思ったので。江口ボイスの「俺ねェ~」っていうねっとりボイス想像つくもん…。聞きたい…ドラマCD…。

岸尾だいすけ弱虫ペダル 手嶋純太役、Dグレ ハワード役、ジョジョ スティーリー・ダン

 ひょうひょうとしたとこが多めの徹君になりそう。めっちゃ手際良さそうだし作品バンバン作ってそう。ニコニコしながら全くこちらの話を取り合ってくれ無さそう感がじわっとヤバいやつでは…?感を醸し出してくれそう。

福島潤弱虫ペダル 鳴子章吉役、怪盗ジョーカー キャプテン・ブルー役

 後輩感MAXの徹君のイメージ。学生時代の徹君とかで聞きたいな~と。はっちゃけた元気いっぱいのところもありつつ、ちょっと影もありそうな声質が学生徹君に合うのではと思います。 

 

玉瀬園六

遊佐浩二ネウロ 笹塚衛士役、BLEACH 一丸ギン役、タイバニ ルナティック役

 京ことばなら遊佐さんのイメージがどうしても浮かぶしとても似合いそう。食えなさっぷりがネイティブ京ことばで加速しそう。ねっとりいたぶるような声色で喋られて落ちない人間いないと思います。耳から摂取したい園六さん。

泰勇気>イナイレ 狩屋マサキ刀剣乱舞 宗三左文字

 野島(兄)あたりも浮かんだんですが秦さんで。儚げな声ながら芯の強さを感じられる声が園六さんを演じたらハマるのではと思いました。京都出身の男性声優さんではないのですが魂に京都が見えるお声。

平川大輔ジョジョ 花京院典明役、School Days 伊藤誠役、Free! 竜ヶ崎怜役

 ひらりんの薄氷を踏むような鋭く危うい感じが園六さんで聞きたいなぁと思ったので。夢枕に立たれたものは死ぬ的な妖怪み溢れる園六さんになるのではと予想。動くSEがしゃなりしゃなりと鳴りそうなイメージ。

 

 それぞれのキャラに合いそうな男性声優の方は、思いつく限りはこんな感じでした。楽しいので他CV合いそうな方いるよ~みたいなのも見たり聞きたいですよね。ホント楽しい。

 色々考えて思ったのは一人に絞るのなんか無理だ!ってことです。全員聞きたい!殺彼もポプテのように声優リセマラをしてもらうしかないのでは…?まずはドラマCDをなんとしてでも聞きたい!ということで殺彼の単行本買って応援していきたい所存です。三巻くらいには有償付録で…とか夢を広げて続きを待ちたいです。まだまだ目が離せない殺彼ワールドがこれからも広がっていきますように!松岡禎丞はいいぞ。

 

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"自分に愛を囁く推し"が地雷な夢女子と夢男子にこそ『殺彼』を読んでほしい

 

  "自分に愛を囁く推し"が地雷な夢女子と夢男子にこそ『殺彼』を読んでほしい

 どういうことか。タイトルまんまである。

 推しが好き!でも自分なんかに愛を囁く推しは見たくない!と思った経験がある夢女子と夢男子の夢諸氏にこそ、3/9に第一巻が発売された、漫画『殺彼-サツカレ-(著者:大介+旭 新潮社)を手に取ってみてほしい。という布教ブログである。相当長くなったのでもう以下URLから本編を読んだ方が早いと思うのでサムネで既にグッと来てる方はすぐに読んでください。ブログのタイトルどういうことだ!と気になる奇特な方は以下どうぞ。長いよ!

 

殺彼 - 大介+旭 / 第1話 | くらげバンチ

 

 とまぁ主語を大きく夢諸氏向けにアピールをしてみたのだけれど、『殺彼』は夢向けであると同時に、夢思考が苦手な人も読みやすいという相反する性質を持っている。夢漫画だけのカテゴリに収まらないド級作品なのだ。
 
 それでもあえて夢観点から熱くこの漫画を推す理由は、キャラクターを愛するがこそ"推しが自分を愛するという解釈違い"に耐えられない、そんな面倒な拗らせ方をした夢諸氏でもすんなり"彼女"として世界に入っていける点において、本作は従来の夢作品と一線を画しているからである。
 思い当たる節がある方もいるのではないだろうか。愛されたくはないけど関わりたい、それも自分という個性を相手が認めるほどの深い関わりではなく、でも推しの人生に消えない一滴の染みのような存在になりたい──。そんな複雑厄介でワガママな欲望を満たしてくれる、愛という重荷から解き放たれた世界が『殺彼』のなかには広がっている。
  
 
 ではめくるめく『殺彼』ワールドを、と言いたいところだが、本作はグロテスクでショッキングな描写も多いので耐性のない方向けに基本情報からいってみよう。
 
 『殺彼』は現在くらげバンチというWEBマンガサイトで隔週金曜日に連載されている。なんと無料!ブルーの背景の爽やかさが消えるほど『殺彼』バナーの蛍光色の圧とアングラ感が凄いけど編集部は新潮社さんなので怪しいサイトではない。そういう点でも安心である。
 ちなみに他連載も『お前はまだグンマを知らない』『間違った子を魔法少女にしてしまった』など強力布陣が火花を散らす。世紀末覇者決定戦もかくやと思うような刺激的なラインナップの中、アイコンのピンク髪のイケメンに目が止まった方も多いのではないだろうか。ビビッと来た方は己の直感と性癖を信じてバナーをクリックしてほしい。
 
 本編はくらげバンチで連載されているし、ぜひその目で見てほしいのでネタバレは極力控えつつ、コンテンツとして『殺彼』がいかに練られていて面白いのかということを書いてこうと思う。
 殺人彼氏、略して『殺彼』と銘打たれているように本作のメイン登場人物は全員男、しかも殺人鬼で我々一人称視点の"カレシ"になってくれる作品である。キャッチコピーは貴方は誰に殺されたい?
 しかし殺人鬼たちは彼女のことを彼女が求めるような形で愛(殺)してくれることは基本的にない。"彼女"だと思っていた自分は、彼氏──殺人鬼にとっては"獲物"でしかないのだと理解した瞬間のカタルシスを、目の前の男に蹂躙されるしかないのだと知る絶望感を、我々読者は読者という神の視点以外にも殺される被害者(彼女)視点という一等席で血とモツたっぷりに楽しむことが出来る。
 
 そして『殺彼』が特徴的な点の一つに、夢パートと物語パートが絡み合うように展開していく点が挙げられる。
 『殺彼』は様々な彼氏に目の前で彼女(というよりも獲物)である自分が殺されていく様を迫真の描き込みっぷり (死体的な意味で) 魅せる夢パートと、偶然にも彼女を殺してしまったDV男である桐生優太が殺人鬼たちの活動する闇社会に巻き込まれていく物語パートが交互に展開されていく。
 夢パートで各々の彼氏がなぜ人を殺すのかという彼の思考の一端が知れたりする掘り下げでキャラクターにハマり、物語パートで優太の行く末が気になり殺人鬼を取り巻く物語から目が離せなくなる、一つで何度もおいしい構成になっている。
 
 味のある脇やラスボスの位置につくため登場回が少ない、という悲しみを経験したことが悪役好きには一度はあると思うのだが、『殺彼』は全員殺人鬼なのでどのページにも人を殺す顔のいい男が載っている。公式ブs(推し)フツメンもいるしオッサンもいる。動物的な獰猛さと無邪気さのあるアッパー系殺人鬼から一見良識的な殺人鬼までより取り見取りという福利厚生の良さである。しかも下衆顔や絶望顔や成人男性の失禁をガチャ単発二回分のお金でまるまるコミックス一冊分披露してくれる。お釣りがくるサービスっぷりである。
 暴力!セックス!金はまだちょっとしか登場してないけど裏で蠢いてそう!という背徳的な娯楽要素が役満!スリルたっぷりのサツジン・エンターテインメント・コミックなのだ。
 
 
 すでに趣味どストライクの人にとっては十分楽しいがいっぱい!といった感じなのだが『殺彼』の魅力はこれだけにとどまらない。特徴的な点の二つ目、殺される女側の視点が夢主人公視点として機能している点だ。
 
 乙女ゲームをプレイした時に感じたことはないだろうか。推しが画面越しにこちらに向かって愛を囁くたび心をよぎる、「私は彼が褒めるようないい子ではない」「可愛くもない」「頑張ってすらいないのに愛を受ける権利はあるのか?」と。彼が求めるような素晴らしい愛するべき"彼女"にこそ愛を語らうべきなのに、と自分に愛を囁く推しが解釈違いになっていく。
 愛されたくないと言う以上夢女子と名乗るのもなんだかおかしいし、でも推しには個として認識されない程度(いわゆるモブ女)関わりたい気持ちも捨てきれないまま、好みに合う作品が見つけられずもう夢作品はいいかな~…と思うような人にこそ読んでもらいたい。私が『殺彼』を夢方向で推す最大の理由はここだ。
 
 夢要素としての特徴を持ちながら、『殺彼』の殺人鬼たちは基本的に我々に"彼女としての振る舞い"を求めない。*1
 
 殺人鬼たちにとって殺す女たちとは女体を持った生命体でしかない。彼にとっては娯楽品であり、彼にとっては消耗品であり、彼にとっては食材である。被害者に人権、人格は全く考慮されない。殺人鬼と被害者たちには偶然出会ってしまった以外の接点はない。彼らの求める記号に偶然合致していたため狙われただけなのだから、彼らはこっちの性格なんて知るわけないのだ。
 どんなゴミクズのような性格と自負していても、容姿に自信がなくても、根暗そうに見えることを喜んでくれたりさえする──各々の殺人鬼にとってのこだわりや譲れないポイントをクリアさえしてしまえば、彼らは愛(ころ)してくれるのである。そこには「素敵な推しに見合うように頑張らなきゃ」といった愛し愛される苦しさとは無縁である。殺したいから殺す、というこちらの都合を全く考慮しない一方通行のコミュニケーション、理不尽すぎるエゴが愛されるためには頑張らなきゃいけないことに慣れ切った脳に痛快で心地いいのだ。
 
 
 なおおススメポイントに夢要素を押し出して紹介したが、話の主軸は優太が主人公として"同業者"の世界に巻き込まれていく物語パートである。間に挟まる夢パートでは夢主人公の容姿は明確に描写されず、カレシ達は恋愛感情を獲物に向けることはないので夢耐性のない方でも読みやすい。殺される女という物理的なリョナは勿論、加害者から一転、殺人鬼のなかでは立場も力も弱い存在の優太が精神的に追い詰められていく姿は精神的リョナ勢にもおススメである。
 さらに相互依存者、祖父孫のような関係など多様な──時にカレシと彼女である我々夢主人公よりよっぽど濃密な殺人鬼同士の絡みは腐女子の食指をくすぐる隙のなさっぷりである。趣味にさえ合致すれば誰だって楽しませてみせるという胆力と懐を持ったエンターテインメントっぷりが紙面から伝わってくる、そんな真摯な作品だ。
 
 『殺彼』はエンタメだ、と繰り返し書いているのでなんだ殺人をマンセーする漫画か、という誤解が生じそうだが、『殺彼』は違う。彼女を殺してしまった現場を見られた優太は弱みを握られたと認識し焦り怯える。作中のキャラ(食人鬼)の台詞にも「人殺しがバレたら罰せられるのは当然だろう」と明確に書いてある。殺人鬼たちは、犯行が露見すれば罪に問われると認識し理解した上で、己の趣味や快楽や主義のために人を殺しているのだ。そして読者の私たちは、現実では人を殺してはいけないと理解した上で『殺彼』の物語を楽しむ。
 殺人鬼になすすべなく殺される弱者*2 の"私"として楽しむ。そして殺人鬼たちのなかでは弱者となった優太の姿を、読者の立場から俯瞰して見た時思うのだ。弱者である優太が追い詰められる姿を楽しむ自分が、奇しくもはじめのページの弱者の女をいたぶって楽しんでいた優太とフラッシュバックしていく恐怖。暴力描写だけではない、ゾッと肌が泡立つ感覚はフィクションから与えられたものだが、この上なく現実だ。
 
 このような楽しみ方は、作品の中で倫理観が徹底されているからこそ出来る体験だ。そしてそれを極上のエンタメだと私は思うので殺彼』はエンタメだ、と言い続けたいしこれからも布教したい。殺彼』はいいぞ。
 
 と、思いつく限りの『殺彼』の面白さを脈絡なく語ってみた。内容は読まずともこんな長文を書かざるを得ないようなパワーを持った作品であるということは伝わったのではないだろうか。『殺彼』の色んな楽しみ方の一つになれば、と夢方向でプレゼンさせていただきました。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
 
 
以下蛇足
 このブログを目に留めて下さった方に布教出来たらと思って書き始めたんですがそもそもこんな長文最後まで読んでくれるのは既に殺彼ワールドに浸かったディープな読者の方ぐらいなのでは~~~って感じの長さになりました!お祭りに参加したかっただけですこんなに書くはずではなかった!なんか堅苦しい感じになってしまったけど殺彼いいよ~面白いよ~ってことをそれっぽく書いただけなので気軽に手に取って読んでほしいです!これ全然的外れてるな~とか思われたらどうしようって感じなんですけどこの熱意を伝えたかっただけなので許してください!解釈違いあったらごめんなさい!ともかく単行本発売おめでとうございます!めでたい!連載続いてまだ立ち絵だけの可愛い子を連載と紙媒体で拝みたいのでみんな単行本買ってください!今なら一巻の続きの10回をくらげバンチ公式サイトで読める!『殺彼』はいいぞ!以上!!
 
CV妄想とか軽いおつまみブログ
 
 

*1:彼女としての振る舞いを求めないと書いたが、優太は一般人の彼女とお付き合いをしていた。しかし彼女が「自分は彼女らしいことをしている」と現状に満足し自分に従わせ続けるために彼女ごっこに付き合っているだけに(私には)見えた。優太にとっては彼女としての振る舞いは(貰えるもんは貰うけど)特に必要なく、自分が好きに殴れるタイプの女(作中のような大人しい地味女)であることが重要なのでは?金を運び暴力を振るう相手が逃げていかないようにするための、楽しい暴力の時間のための必要時間でしかないのでは?推せる。推しです。

*2:女性を弱者って書いているけれど膂力などで成人男性である加害者に敵わず、全力で抵抗しても無駄で殺されるしかないって意味の肉体的などうしようもない性差を差したものであり女性の社会的立場が云々みたいな意味ではないです。念のため。というかそういうことを注意書きでわざわざ書かなきゃいけないような状況が社会に蔓延りかけてて、フィクションの世界でも及んできているからこそ殺彼のような作品がちゃんと出版されて、健全に倫理観を以て楽しめるような社会であってほしいと思ってます。